工具実験室 ~ラチェット破壊試験編~

工具が気になれば、もっといろいろ知りたくなります。日常感じるフィーリングだけでなく、自分以外のユーザーからの口コミ、メーカー発表のデータなど、工具について集まる情報は数年前とは比較にならないほど簡単に集まるようになりました。それでも、同じ条件でいろいろな工具を比較してみたい! ということで、久々に工具をいっぱい集めて実験してみました。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

はじめに

最初に工具の破壊テストを実施したのが2005年(工具の本vol.1)のこと。その後2006年の実験を最後に実施していませんでしたが、時は流れ、工具の品質も大きく変わっています。毎回、同じことを説明するのですが、破壊試験の数値イコール工具の評価ということでは決してありません。“壊れない”ということのみが工具の評価ならば、今回調査したような大手の工具メーカーの技術をもってすれば、もっと数値の高い工具を作ることはそれほど難しいことではないでしょう。デザイン、使い心地といった数値化できない面を含め、工具は多面的に評価するべきものだというのは今回も強く感じています。

今回の破壊試験では、破壊トルクだけではなく、工具の硬度や破壊時のアングルも一緒に掲載しました。また、実際に壊れた工具の写真を掲載しているので、その壊れ方も見ていてだければと思います。同じ環境の同じ条件で出てきた数値を並べて比較してみると、作り手の意図や試行錯誤などまでも感じることができると思いますので、みなさんにも是非、数値から製品の裏側にあるストーリーを読み取っていただければと思います。

今回テストした素晴らしい工具を世に送り出したメーカー技術者のみなさん、そしてこのテストにご協力を頂いた工具メーカーの皆さんに誌上をお借りして心から感謝いたします。

ラチェット破壊試験

多ギア化が進んだラチェットの破壊トルクはどうなっているのか?とっても気になる最新モデルのテストでしたが、結果を見ればわかる通り、多ギアになってもその数値は全く問題ないということがわかりました。なかでもスナップオンの数値はスイベルタイプ、スタンダードタイプともに優秀な値を出しています。

スイベルラチェット編

多ギアの丸型スイベルラチェットは予想通りギアに損傷を受けたものはなく、みなスクエア部が壊れました。プッシュキャンセル機構も損傷が見られましたが、数値的にはこれも問題のない範囲だといえるでしょう。

スナップオン

DEEN

ヴェラ

スタンダードラチェット編

小判型のラチェットのなかではコーケンZ-EALだけにギアの破損が見られました。これは同社の取材時に聞いた空転トルクと切り替えレバーの向きにこだわった話と整合性がありますが、それでも十分な強度は出ています。

ネプロス

DEEN

スナップオン

Ko-ken(Z-EAL)

DIYショップ品 – 1

DIYショップ品 – 2

総括

今回は市販されているDIY系のラチェットレンチも併せてテストしてみましたが、やはりブランド工具品とは大きく違うレベルだということが認識できました。上質ブランドメーカーのみを比較してみると、その数値の違いに目が行ってしまいますが、このようにDIY品の数値を見ると、高いレンジで製品のなかで個性を追求しているということがよくわかります。

この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。

工具実験室 アーカイブ
工具サビサビ実験 ~海水に工具はどのくらい耐えられるのか?~
工具実験室 ~レンチ破壊試験編~
工具実験室 ~L型レンチ破壊試験編~
工具実験室 ~ヘックスソケット破壊試験編~