ドイツ 工具の旅〜歴史とメーカーの工具が買える場所〜

もしドイツを旅行することがあっても、さすがにメーカーを直接訪問して見学したり工具を買ったりすることは簡単にはできません。どんなところで工具の歴史を感じ、どんなところで工具を買えるのか、デュッセルドルフ近郊の工具耳寄り情報をご紹介しましょう。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

工具博物館編

さすがにもの作りの国だけあって、ドイツには工具や道具作りの歴史を感じられる博物館があります。今回は、そのなかでもハゼットの近くレムシャイドにあるTOOL博物館と、ゾーリンゲンにある産業博物館のふたつをご紹介します。

レムシャイドのTOOL博物館

TOOL博物館は、文字通り工具作りの機械が多く展示してある博物館。クニペックスやスタビレー、ハゼットなどが近いレムシャイドということもあり、それらの半製品や古い工具が多く展示されています。比較的整備された綺麗な博物館には古い機械や工具の歴史、原始時代から今に至るまでのストーリーも感じられ、さほど大きい博物館ではないので、1時間もあれば十分ゆっくりと見学することが可能です。

ゾーリンゲンの産業博物館

次に訪問したのが、ヘンケルスの街として有名なゾーリンゲンの産業博物館。ここは工具だけでなくドイツの鉄製品をトータルに紹介する博物館です。もちろんヘンケルスの製品や工具の紹介もあれば、美容ハサミなどの古いものの展示もあります。規模は前述のTOOL博物館よりもかなり大きく、博物館のなかには50年以上前の工場の洗面所や脱衣所までが再現されています。

そこに並べられた機械の数々は、往時の工場を再現しているようでかなりの迫力。日本の博物館と違うのは、展示物の多くに触れることが許されているということです。実際に当時の職工になったつもりで機械に触れ、材料に触れる。その空間に思いきり身も心も入り込んでしまえば、かなり全身で当時のもの作りを感じることができます。デュッセルドルフまで行く機会があれば、工具に興味にある方には是非訪問して欲しい博物館です。

工具ショップ編

ドイツに来たのだから、ハゼットやスタビレーなんかの良い工具を買おうと思っても、なかなかそういった上質な工具は街ではお目にかかれません。一体、どこで買えばいいのでしょうか?ドイツに行ったことのある工具好きには、そんな経験もきっとあるはず。そこで、実際にメーカーさんに問い合わせて工具が買えるところを訪問してみました。

BAUHAUS(バウハウス)

これはドイツでもよく見かけるアメリカ型のホームセンター。巨大な売り場には工具だけでなく、日用品から場所によっては食品までが揃っています。ここで並んでいたお目当ての上質工具は、クニペックスとヴェラのドライバーが少しだけ。あとはドイツ工具らしい上質な工具は残念ながら無し。日本のホームセンターでも見られるような、あまり質の良くない価格の安い工具がたくさんならんでいました。今回訪問した店舗はケルンのトヨタ(TMG)近く。英語はほとんど通じませんが、アメリカンタイプなので必要なものをピックして購入できます。

Hoffmann(ホフマン)

上質ドイツ工具目当ての場合、このホフマンで買うのが最もオススメ。分厚いホフマンのカタログはドイツのプロが納得するようなえりすぐられた上質なものしか載っていません。ホフマンの商品構成はオートモーティブということではなく、産業関係の商品もラインアップしていて。スタビレー、クニペックス、ヴェラ、PBなどをホフマンのオリジナルブランドとして各社にOEMで作らせている「ガラント」というブランドがあります。

そのほかにもMITSUTOYO、マキタ、東日などの日本メーカーもありました。店内には広いショールームの真ん中に、セールスマンのデスクが3名分。その奥に巨大な倉庫があり、商談がすむと商品が出てきます。残念ながら、今回訪問したケルンの営業所では英語はほとんど通じませんでした。

地元密着の工具ショップ「JUTGER」

ハゼットに頼んで紹介してもらったJUTGERという工具ショップ。これは日本の工場に出入りする業者向け工具商という感じでした。さすがにハゼットの紹介するショップだけあって、店内には綺麗な什器にハゼットがたくさんディスプレイされていました。ハゼット以外にもDEWALTの電動工具や、もちろんクニペックスもありました。ただし店内は狭く、倉庫が中心。ドイツ語が出来ないと欲しい商品にたどり着くことは難しそうです。

ハゼットは、ドイツではスナップオンのようにデリバリーバンで販売されているという噂がありましたが、実際はこのような業者向けの地元プロショップが法人向けに販売していることが多いとのこと。そのため、なかなか一般の家庭人がハゼットを持っているというケースは少ないようです。

この特集は高野倉匡人「工具の本 総集編」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。