貫通ドライバーの正しい使い方とは

そもそも上質工具のドライバーというものは先端の形状に神経を注ぎ、よりネジにフィットした、強くて優しいものを作っているはず。それなのに、なぜネジの先端にダメージをあたえる貫通ドライバーが存在するのでしょうか?その矛盾を考えてみます。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

ドライバーを「叩く」ってどうなの?

ドライバー選びの最初の入り口で誰もが多少なりとも悩むのが、貫通ドライバーにするか貫通ではないものにするか?ということ。しかし、上質工具を選ぼうとする者にとって、なんだか、こんなことに悩むことがそもそもおかしい気がしていました。「上質工具」というカテゴリーでドライバーを考えると、ドライバーの先端形状が最もネジにフィットするもの、ネジとの噛合がよく、スーッとネジを吸い込むようなドライバーが欲しいところですが、そういうドライバーであれば先端は相当繊細な計算の上で作られているはずです。で、あるにも関わらず、お尻を思い切り叩いて先端をつぶすようなものが一般の非貫通ドライバーよりも高い価格の設定で、なんだか上位機種のような扱いなのも、正直どうも納得がいきません。

メーカーさんに聞いてみよう!

マイナスネジがすっかりなくなってしまった今、マイナスドライバーがネジにほとんど使われず、コジリ用やタガネ代わりに使われるのがほとんどなので、マイナスが貫通なのは、ちょっと譲って理解できます。しかし、プラスドライバーはまだまだ主流。フィット感が命の上質ドライバーがどうしてそんな扱いなのか?いくら考えてもわからないので、日本のドライバーを作る代表的な日本の工具メーカー3社に、「どうか本音でお願いします!」と質問をしてみました。

・KTCの見解

お話を伺った人:KTC 商品開発部マネージャー 寺嶋朗氏
「たしかにドライバーの先端のことを考えると、お尻を思い切り叩いて使用するというのはイイことだとは思えません。だからKTCの場合、以前はカタログにも貫通ドライバーのお尻を叩いて使えますということは書いていませんでした(ええ〜っ!知りませんでした!!)。しかし、実際にはユーザーさんは叩いて使いたい。だから叩けるように設計をしています。特にマイナスドライバーについては、もはやマイナスネジを回すというよりもタガネのように使うことが増えていますから、以前採用していた割れやすいパラレル型から一般的な形に変更しています。このように貫通ドライバーというのは考え方としては多少矛盾がありますが、ユーザーさんの使い方にあわせて作られているというのが本音ですね」

・ANEXの見解

お話を伺った人:兼古製作所 営業課長 兼古文雄氏
「貫通ドライバーの前身は、タガネ代わりに作られた割柄(わりえ)ドライバーなんですね。1887年創業のドイツのFELO(フェロー社)社がその発祥といわれています。つまり貫通ドライバーといえるものは、当社マイナスドライバーだけだったんです。日本も最初はマイナスだったと思うんですが、その後プラスもお尻を叩いて、舐めてしまったビスに食い込ませて回すという事が一般的になってきました。昔はドライバーの柄にイタヤ(ハナ材)とよばれる木材が使われていてよく割れた。そこで、割れないようなドライバーを作ろうというので貫通ドライバーが出来た、という感じだと思います。メーカー的にいえばビスをまわすということを考えるとあんまり叩いて使って欲しくないのですが…。ちょっと刺激を与える程度の使い方がよいと思います」

・ベッセルの見解

お話を伺った人:ベッセル 企画開発部取締役部長 柴田升人氏
「実はドライバーのグリップエンドに座金をつけた貫通ドライバーの原形は、1930年代に私どもが生み出したものです。
この背景には、締結する部材を叩きながらネジ穴を合わせたい、つぶれたネジ頭にあわせてドライバーを叩いて食い込ませてネジを締めたい、などのユーザーからの要求があります。貫通タイプが欧米で普及しにくいのは使い方だけではなく、商用電圧が220V〜240Vの高電圧のため、絶縁ドライバーが中心であることにも起因していると思います。私どもは、軸材質や熱処理技術の向上によって貫通ドライバーの強度がタガネやポンチを上回るものになっても、貫通は補助的な機能であることを伝えていかなければならないと考えています。作業における安全対策の注意事項をカタログ等で行い、開発者の意図が伝えられればと思っています」

・・・以上がメーカー3社の回答でした。う〜ん、言われてみればなるほど!となりますが、じゃあ、ガチガチに固着しちゃったネジに遭遇したらどうすればいいのか?そのときは一般的な貫通ドライバーではなく、やはりそれ用の専用品を使ったほうが工具にもネジにも良いようです。ネジは外れず、せっかく買った高価な貫通ドライバーを破損してしまった!という悲劇を生む前に、下記のような専用工具を用意しておきましょう。

コレが思いっきり叩けるドライバー!

インパクトドライバー

激しく叩いてドライバーを使うのであれば、こういった専用工具を使って欲しいというのが、今回取材したメーカーの本音。通常のネジ締め作業にも使う貫通ドライバーは、あくまでも補助的にコツンコツンと叩く程度に使うのが開発者の意図であり、ネジがつぶれてしまったものにはインパクトドライバーを使う。コレなら叩くと同時にビットが回る。ビットも消耗品として交換できるのでもっとインパクトドライバーを上手に活用してみましょう。
DEEN インパクトドライバー
ファクトリーギア参考販売価格 3,780円(税別)
製品購入ページ

     

割柄ドライバー

貫通ドライバーのルーツとアネックスが教えてくれたのが、この割柄ドライバーと呼ばれるもの。今も各社からラインアップされていて、一般のドライバーよりタフな作りで安心して使えるようになっています。マイナスドライバーを叩いてよく壊してしまう、という場合はコレを使うべし!ということです。
ANEX 割柄ドライバー(刃先11mm)
ファクトリーギア参考販売価格 2,310円(税別)
製品購入ページ