工具サビサビ実験 ~海水に工具はどのくらい耐えられるのか?~

2005年の「工具の本」Q&Aコーナーで「ピカピカ工具はさびないのか? ソケットサビサビ実験」を実施しました。そのときは初回だったこともあり数日間のテストでしたが、今回はもう少し時間をかけて行いました。題して「サビサビ実験再び!」
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

サビサビ実験するなら「海水」でしょ!

今回の企画を考えるにあたり、様々な試験をしたらどうだろうか?というアイディアがありました。そこで最初にスタッフから声が挙がったのが、サビ実験でした。2005年に実施したときは、ピカピカのソケットはどのくらいでサビるのか?を知りたくて数日間テストしただけでしたが、そのわずか数日のテストでも、上質工具のソケットとDIYのソケットの違いがわかったり、上質工具ブランドのメッキがサビに強いことが実証できたりと、多くの発見がありました。

そこで、あれから10年近く経過した今の工具はどうなのか?もう一度やってみようということになりました。

前回は食塩水を使って実験したのですが、どうせならできるだけ自然な状態がいい。海辺や、マリン関係で工具を使う人もいるだろうと、実験班は海へと向かいました。そこでひとまず砂浜にレンチを置いてはみるものの、そのまま放置するわけには勿論いかず、海水をバケツに汲み取り、工具を入れて放置することにしました。

通常の工具メーカーのさび実験は、塩水を霧状にして吹き付けることが多いので、この海水ポチャンが、サビ実験として適当なのかどうかはよくわかりませんが、可能性としては、試験室の中で人工的なスプレーで塩水を霧状に吹き付けるよりは、現実的といえるハズ! と納得して試験をスタートしました。

今度のテストは月単位!

今回テストしたのはコンビネーションレンチとソケット。ピカピカ系のレンチ・ソケットとしてスナップオン、ネプロス、ディーン。梨地系のレンチとしてKTCスタンダード、ハゼット、スタビレー。梨地ソケットは、KTCスタンダード、ハゼット、コーケンとしました。そしてノンブランドDIY工具のレンチも併せてテスト。

レンチは1か月間海水に浸した後、一旦自然な状態で放置し、さらに1か月間再び海水に浸し、トータル2か月間海水に入れた状態にするというかなりハードなテストです。ソケットは、2か月半どっぷり海水浸しとしてみました。

上質工具のメッキはやっぱりスゴイ!

その結果は次の写真をじっくり見て頂くことにして、今回も感じたのは、やはり上質な工具のメッキはスゴイということ。2か月間も工具を海水に入れ続けるなんていうのは通常ありえないことですが、ほとんどの工具にサビは出ているものの、見た目では使用するのに支障があるようなダメージを受けている部分はありません。それどころか、ちょっとクリーナーを使えばまるで新品のような輝きが甦る。もちろん工具を日常的にメンテナンスすることは大切ですが、何よりも日常的に使用することが一番よい状態を保つことになる、と結局前回のテストと同様のことを実感したサビサビ実験となりました。

コンビネーションレンチ編

ピカピカ工具

写真上からネプロス、スナップオン、ディーン。ところどころ多少赤いサビがみられる部分もありますが、3本とも2か月以上海水に入れられていた工具とは思えない状態の良さです。

【スパナ部分】左からネプロス、スナップオン、ディーン。ネプロスはスパナの奥の部分に丸くサビが出ていて、ここが塗装時にフックが掛けられているポイントだということが予想できます。もっともネジ回しに影響しない箇所をフックしているというのもこだわりなのでしょう。スナップオンとディーンのスパナ面は共にキレイです。

【メガネ部分】同じく左からネプロス、スナップオン、ディーン。スナップオンとディーンは内側の同じような箇所、スナップオンでは塗装の際にレンチを掛けたと思われる部分に一部サビが集中して見えます。ネプロスはうっすらとサビが見える程度。

梨地工具

写真上からKTC、ハゼット、スタビレー。ピカピカ工具と比較すると、梨地工具は表面に赤サビが出ている部分が見られます。KTCはレンチのハンドル部分にはほとんど見られません。ドイツ工具はメッキの際にホルダーがあたっていたと思われるハンドル部分にサビが出ています。

【スパナ部分】左からKTC、ハゼット、スタビレー。KTCはネプロスと同じポイントに丸いサビ。ハゼットも同じところに同じ大きさのサビが出ているので、フックポイントが似ているといえるでしょう。スタビレーは全体的にスパナ部のサビが大きい。

【メガネ部分】
梨地レンチでもKTC はほとんどサビが出ていません。スタビレーもメガネ内側はほとんどサビはなし。塗装時にはフックを掛けるポイントをハンドル部分にすることで、メガネの内側はしっかり防錆しているのでしょう。

DIY工具

全く違うレベルでサビが発生しています。遠い昔、海で水上バイクで遊んでいた頃、整備用の工具を船体に入れたまま翌年見ると工具は全てこんな状態になってしまっていたことを思い出しました。

スパナの開き口の仕上げ全体にムラがあり、メッキが薄い部分にさびが集中しています。素材も作り方もブランド工具とは全く違うので、比較するという見方ではなく、改めてこういうものなのだということを確認する実験だったといえます。

ソケット編

ピカピカ工具

左からネプロス、スナップオン、ディーン。ピカピカ工具はさすがに外側にはほとんどサビが見られません。ソケット内部は3つともサビが出ていますが、もともと上質工具ブランドではソケットの内部はほとんどメッキしていないので、サビは発生しやすいと考えたほうがよいでしょう。使用後に防錆スプレーをするなら、内側をしっかりと。

梨地工具

左からKTC、ハゼット、コーケン。梨地のソケットはレンチほどピカピカ工具とサビの出方に大きな差が見られませんでした。このレベルのブランド工具であれば、梨地ものでも大丈夫といえるのではないでしょうか? ピカピカソケット同様、防錆スプレーは内側だけで大丈夫そうです。

※この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の記事をWEB用に再構成したものです。

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