奥まったボルトの回し方~エクステンションバーとディープソケットはどちらが便利か~

「奥まったボルトを回す」作業ではどのような工具を使うでしょうか。
一般的には『エクステンションバー』を使うか、『ディープソケット』を使う方法があります。
結果的には同じボルトにアクセスできるわけですが、それぞれのメリットを押さえておくと便利になります。

エクステンションバーでのアクセス

DEEN 3/8SQエクステンションバー150mm

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簡単にエクステンションバーの機能をご紹介すると、通常のラチェットハンドルとソケットでは届かない位置のボルトに対してアダプターとしてエクステンションバーを挿入することでソケットの全長を延長しアクセスできるようにする工具です。

メリット① 長さの豊富さ

エクステンションバーは各工具メーカーから32mmの極短モデルから1000mmの特殊なロングモデルまで設定が豊富で、アクセスしたい位置に対してできる限り適切な長さのものを選べる点です。
ソケットの全長(スタンダード・セミディープ・ディープソケット)では届かない距離もエクステンションバーで調整する事ができます。
一般的に車の整備作業でよく使われるエクステンションバーの長さは50・75・150・300mmが中心です(メーカーによって多少長さの設定が異なります)。エクステンションバーのバリエーションを揃えておくとアクセスできる幅が増えます。
エクステンションバーの差し込み部分は通常同じ差込み規格(1/2SQ、3/8SQ、1/4SQ等)なので、エクステンションバー同士を接続してさらに長くする事もできますが、作業中にエクステンションバーが外れるデメリット(工具や部品の破損、紛失に繋がる)が高まるので、かなり奥まったボルトにアクセスする場合は500~1000mmクラスの長いエクステンションバーも視野に入れてみてください。

nepros 3/8SQエクステンションバー30mm

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一方で30~50mmクラスの短いモデルは奥まったボルトへのアクセスだけでなく、ソケットを少しだけ伸ばすことで奥まってはないが、くぼんだ位置のボルトのアクセスや手前に障害物があってソケットが届かない状況で最適な長さに微調整する目的で有効です。

メリット② 追加機能

エクステンションバーは「ソケットを延長」だけではありません。追加機能が加わることでアクセス性や安全性を上げる事ができます。

・ウォブルモデル

Ko-ken 3/8SQウォブルエクステンションバー75mm

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こちらのタイプは、「接続したソケットに角度を付ける」機能が加わっています。
ソケットを挿入する凸部分が大きく面取りされ、装着時にある程度のゆとりができるのでソケットを傾ける事ができます。
これによって角度を付けてアクセスでき、障害物を避けたりラチェットハンドルを動かすスペースを確保したりできます。

他のエクステンションバーを使用した画像と比べるとソケットが傾いているのが分かる。Ko-ken、nepros、Snap-on製はこの機能と通常のまっすぐ接続できる状態を両方搭載したエクステンションバーが設定されている。

・ロック付きモデル

こちらは「ソケットの脱落を防ぐ/着脱をスムーズに行う」機能です。
エクステンションバーににボタンが付いてあり、ボタンを押さない限りソケットが外れないようになっています。
奥まった場所でソケットが脱落してしまうと回収するのが非常に手間です。そのような心配を減らす事ができます。
またボタンを押すと簡単に取り外せるので、油汚れなどで滑って外しにくいソケットも交換しやすく作業効率を上げられます。

ディープソケットでのアクセス

エクステンションバーのメリットを考えるとディープソケットを使う必要がなさそうにも思えますが、それぞれの特徴を踏まえる事で作業をスムーズに行う事ができます。

メリット① ナットの付け外し

ディープソケットは一般的にスタンダードソケットに対して全長の長いソケットを指します。
ボルトの付け外しはディープソケットを使ってもエクステンションバーを挿入しても同じアクセスになりますが、少し事情が異なるのが「ナット」の場合です。

写真のようにナットがボルトにはまっています。
このナットをボルトの首下(ネジ山のある側)からアクセスして外す必要がある場合、ボルトの首下が障害物となってしまいます。
具体的にはソケットの底(エキバーとの接続部分)がボルトの首下に当たってしまい、いくらエクステンションバーで伸ばしても届きようがありません。

そこでディープソケットは内部の構造が空洞になっていることで、ボルトの首下をある程度この空間で逃がしてナットへアクセスする事ができるのです。

ナットの掛かりしろ部分(六角形状)の奥に円柱状の空洞がある。

DEEN 3/8SQディープソケット(6角)12mm

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この特徴を踏まえれば、奥まったナットを外す為に「エクステンションバー+ディープソケット」という組み合わせを選択する事がベストになる事もあります。

メリット② 作業のフィーリング

作業のフィーリングというと個人差のあるお話ですが、重さやラチェットハンドルを振った時の扱いやすさなど実際使ってみた時に体感してくる部分です。

ソケットだけでのアクセス(全長)には限りがあるので、どこまでの作業ならディープソケットで事足りるのか、エクステンションバーが必要かを見極めた上で使い勝手も考慮したい。

重さについては、例えばディープソケットの全長とエクステンションバー+スタンダードを合わせた全長が同じ場合はディープソケットの方が軽くなります。
エクステンションバーを駆使してソケットの長さを頻繁に変えるような作業ではなく、一定の位置のボルトにアクセスして回し続けるような作業であればディープソケット一つで事足りる訳です。

DEEN レザーケース(ロールタイプ)ブラウン/レッド

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それに関連して、工具を持ち運ぶ際も既に決まった作業であれば必要十分な長さのソケットだけ準備して荷物を軽くする事ができます。
またラチェットハンドルにソケットだけでなくエクステンションバーなどアダプター類を付けていくと工具同士のはめ合いによるがたつきが気になったり、前述したようにソケットの脱落などのリスクも伴います。工具の組み合わせはシンプルな方がこのような心配が減ります。

まとめ

・エクステンションバーは豊富なラインナップからボルトにアクセスするための必要な長さを選びやすい
・追加機能を持つエクステンションバー(ウォブル、ロック機能)でより複雑なアクセスと安全性を向上
・ディープソケットは「ナット」の付け外しで有効
・ディープソケット一つでアクセスできる作業は工具の軽量化(持ち運び)に有利

今回はエクステンションバーとディープソケットのアクセス性について比較してみましたが、それぞれのメリットは生かしつつも実際にどのような工具の組み合わせが自分にとって扱いやすいかはできる限り試してみて理想的なものを見つけていただければと思います。