工具実験室 ~L型レンチ破壊試験編~

ラチェット編レンチ編に続き、今回はL型レンチ編。近年の自転車ブームに比例するように売り上げが伸びている工具ですが、以前の「とりあえず持っておく」的な位置付けではなく、各メーカーごとに趣向を凝らしていることもあり、同じような形状でもその使用感は微妙に異なります。メーカーのこだわりは強度へ反映されるのか、大変興味深い試験となりました。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

考察

今回テストしたL型ヘックスレンチは、ハゼットの強度がやや他社と比較して低かったのですが、総じてみな良い結果となったといえます。以前(2007年)のテストでは予想以上に低い数値だったPBが破壊トルクの数値、硬度ともに大きくなっていることから、ここ数年で素材が変更されているということがわかります。工具メーカーの場合は素材を変えた際、積極的に情報を公開しないこともあるため、同じブランドの同じ製品でありながら、どこかのタイミングで大きくバージョンアップすることがあります。強さという面ではヴェラがここでも最高数値でした。

メーカー別L型レンチ破壊結果

ハゼット

ヴェラ

ボンダス

アサヒ

PB SWISSTOOLS

ベッセル

ミトロイ

KTC

エイト

DEEN

DEEN(NEW)

PB SWISSTOOLS(チタン)

ヴェラ(ステンレス)

総括

L型ヘックスレンチの破壊試験はとても時間がかかりました。硬度チェックの際には、被膜が結果に大きく影響するのでヤスリやカッターで丁寧に削り落としたり、破壊試験では保持部分の違いがないように毎回慎重にセッティングを調整したり・・・。つまり、機械でもちょっとした違いで数値に大きな差が出るのですから、使い手が変われば結果が変わるのはあたりまえ。工具本来の能力を引き出すには丁寧な使い方が大事ということを実感した実験でした。

この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。

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