STAHLWILLE（スタビレー） | ファクトリーギアブログ

創業は1862年という長い歴史を持つスタビレーはドイツの総合工具メーカー。オートモーティブ市場に限らず、製造工場、電子機器、各種設備系、航空機向けと幅広い市場に供給しています。日本でのイメージ以上に欧州では存在感が高く、欧州ブランドで最初にトルクレンチを作ったことでも知られています。特に板バネを使ったトルクレンチは日本でも人気のロングセラー商品となっています。
text：高野倉匡人（ファクトリーギア代表）

Contents

1 ブランド・ロゴマーク
2 会社名・呼称・略称
3 国（ブランドのある国）
4 工場
5 概要
6 歴史（エピソード）
7 カテゴリー
8 主な製品（代表工具）
9 デザインの特徴
10 使用されている業種
11 販売形態
12 保証
13 参考文献
14 その他
15 外部リンク

ブランド・ロゴマーク

会社名・呼称・略称

STAHLWILLE　スタビレー

国（ブランドのある国）

ドイツ

工場

ドイツ
STAHLWILLE　工場レポート

概要

日本では江戸時代末期、維新の風が吹き荒れていた頃の1862年。エドワード・ワイル氏によってスタビレーは設立されました。100年以上の歴史を持つドイツの大手有名工具メーカーでも、そのほとんどは第二次世界大戦後に急成長したのですが、スタビレーは戦前の1900年代初頭からドイツのモノ作りを支える総合工具メーカーとしての立場を確立していました。

歴史（エピソード）

今では幅広い業界に向けて膨大な種類の工具を提供しているスタビレーですが、創業当初は蒸気機関車用のシンプルな道具類を作るメーカーだったのだそうです。現在もスタビレーの本社の一部には、かつて工場に汽車が乗り入れていた当時の線路が残されていて、スタビレーとドイツの鉄道との深い関係を物語る、会社の歴史を感じられる場所があるほどです。日本人には少々発音しにくい社名は、「STAHL」（鉄）と創業者の「WILLE」（ワイル）を組み合わせたもので、ドイツの鉄モノ製造を象徴するインダストリアルな空気感に溢れるものだといえます。

以前、ドイツのスタビレーの本社を訪問した際、1914年に作られたというスタビレーの総合カタログを見せてもらいました。白黒ページのカタログでしたが、掲載されている工具のラインアップは、現代のカタログとしても遜色がないほど豊富なバリエーションと品質の高さを感じられるものばかりだったことに驚きました。聞けば、すでにその当時で500名以上の社員を抱え、輸出比率が80％というビジネスを展開する国際的工具メーカーだったそうです。

現在のスタビレーのドイツ本国における存在感は、ハゼットとは少し異なっています。ハゼットはオートモーティブに軸足を置いた工具メーカーですが、スタビレーはドイツのモノ作り全般を支える歴史あるブランド工具メーカーとして、オートモーティブだけではなく、産業関係（製造工場）、航空機産業、といった広い市場で、プロフェッショナルな現場をサポートする立ち位置にいるといえます。

近年、ドイツ国内では歴史あるドイツ工具だけではなく、アメリカンタイプで少々安い価格帯での台湾メーカーが製造する工具ブランドが台頭してきています。以前に比べると品質面も格段に進歩している台湾メーカーの工具は、広くドイツでも浸透し、確実に現場でも信頼を高めています。ドイツブランドの工具でも台湾メーカーによってOEMされる工具が増えているのですが、スタビレーではドイツの総合工具として、ドイツでのモノ作りに強いこだわりを持っています。世界が狭くなり、モノ作りの現場も分業が進んでいる今、スタビレーのこだわりはドイツメーカーらしいものだといえるかもしれません。

カテゴリー

総合工具メーカー

主な製品（代表工具）

欧州では歴史ある超大手総合工具ブランドとして絶対的な存在感を持つスタビレーですが、日本での人気は決して高いとはいえません。ハゼットと同様に梨地で地味なブランドということもありますが、理由はそれだけではないかもしれません。私は日本で、長く多くのブランド工具を販売しているなかで、スタビレーのブランドロゴにも使われているコンビネーションレンチにひとつの理由があるのではないかと思っています。

デザインの特徴

実はこのレンチ、グラマラスなアメリカンツールを手にしたあとで持つと驚く程軽い。スタビレーのレンチは軽さにこだわり、レンチのボディー部分のデザインをI型とし、中心部分をエグリ取るようにして薄くしています。この独特のデザインは、使用してみると弱さは感じないものの、スナップオンなどのアメリカンツールこそが上質工具の極みだという認識を元に手にすると、いささか頼りなく感じてしまいます。そのうえ、軽さと強度を両立させようとコストをかけたスタビレーのレンチは価格的にも安くありません。日本では、このイメージを払拭することが出来ないままにきてしまっているのではないでしょうか。メーカーの日本でのプロモーションが弱いということもあると思いますが、作業エリアが狭く、コンパクトであることが求められる航空機メンテナンスの世界で評価されているスタビレーの工具は、緻密で繊細な機械の多い日本でこそ、もっと評価されるべき存在ではないかと思います。