2015年に工具の本Vol.7の取材でWERA社を訪れた際、事前にファクトリーギアのスタッフから寄せられたヴェラ製品に関する質問を、なんとマルティン社長直々にご回答頂きました。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
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着色によるマルチカラーは可能?
Q.ステンレスタイプL型ヘックスレンチに、ヴェラの通常の樹脂チューブを付けるのではなく、工具自体に着色させてマルチカラーにする事はできるのでしょうか? お客様より、「サビに強く、なおかつ見分けがしやすければ」というリクエストがあります。
A.面白いアイディアですね。これからの商品開発の参考にします。
グリップタイプのヘックスは何故出さない?
Q.自転車業界ではマストアイテムとされるグリップタイプのヘックスレンチについては、今後の販売計画などないのでしょうか?
A.検討したことはないのですが、現在この商品の市場での価格が崩壊していて、クオリティを追求する我々としては難しいアイテムではないかと考えています。でも、どのくらいのニーズがあるかを直近の市場を調査して考えたいですね。もちろんどんなアイテムでも販売できる根拠があれば作らないことはないです。
丸軸六角は何故不揃いなの?
Q.丸軸六角レンチの断面を正面から見ると、どれも6角形の角の位置が曲がりに対して不揃いになっています。ユーザーによっては、この不揃い6角形が2セット使うことによって狭い箇所のアクセスに有効という少数派の意見もあります。有名メーカー品の6角軸から作るレンチではこのようにはなっていません。これは意図して不揃いにしているのでしょうか?
A.これは、面白い視点ですね。現状の製造工程では丸い軸にヘックスの加工をしたあとで曲げていて、その際にヘックスの角度を気にして曲げてはいない状況です。つまり不揃いになっているのは意図的ではないです。もし、角度を揃えるとしたら、製造工程でひとつ工程を増やさなくてはいけないのですが、今後の参考にしたい貴重な意見です。
摩耗や消耗に関して
Q.ドライバー先端のレーザーチップ加工やダイヤモンドトップ加工は使用時の摩擦によって消耗していきますが、この点について今後の改良予定はありますか?
A.ダイヤモンドトップについては、コーティングしているという面で、普通のタイプより使い方によっては耐久性が高いという声もあります。ただし一般的な話として、先端に滑り止め加工を施せばそれだけ負担がかかります。負担がかかるということは消耗もしやすいということになります。自動車のタイヤでもグリップ性能が高いものはどうしても消耗が早くなるということで理解してもらいたい。耐久性を重視すると今度はグリップ力が低下してしまう。とても難しいポイントです。
レーザーチップのビットは製作可能?
Q.レーザーチップのビットを出して欲しいというお客様が増えています。食い付きの良さを活かしたビットを出して欲しいです。
A.レーザーチップは先端にレーザーカットで溝を作っています。溝は割れるポイントになりやすいものです。衝撃が加わるエアツールなど、一瞬で強いトルクがかかる使い方ではレーザーチップのビットは割れやすいです。そんな理由からエアツールや電動工具で使うビットではレーザーチップは使いたくない(同じ理由から貫通タイプのドライバーにもレーザーチップはありません)。よって、衝撃を加えて使用する可能性のあるビットでは割れにくいダイヤモンドチップを採用しています。
ステンレス工具のメリット / デメリット
Q.ステンレス工具は通常のドライバーやヘックスレンチに比べ、強度・耐摩耗性は高いのでしょうか? また、お客様にご提案させて頂くうえで、ステンレス工具と通常の工具でそれぞれメリット/デメリットがあれば教えて頂きたいです。
A.硬度はHRC56からHRC58でステンレスもスタンダードも同じレベルです。耐久性は同じだと考えますが、ステンレスの方が錆びにくいので長持ちするといえます。
名前が違うのはなぜ?
Q.2011 / 2012カタログP.252の「TORX PLUS IPR」とP.278の「Five Love」ですが、ネジの見分け方はありますか?
A.商標権の問題だけで、商品は全く同じものです。 なので、どちらも違いはありません。
何故、色が変わったの?
Q.レーザーチップドライバーの先端は初期はゴールドでしたがある時期からシルバーになりました。理由は何でしょうか? 強度や耐摩耗性なども変わりはあるのでしょうか?
A.これは機能的な問題で金を使っていたのではなく、デザイン的なものです。製品をスタートしたとき時は 金の価格が安かったので問題はなかった のですが、現在、金の価格が高くなったのでシルバーに変更にしました。機能的には何も変わらないので心配は要りません。
全長の違いはなぜ?
Q.トルクスレンチはヘックスレンチに比べて全長が短いのですが、どうしてですか?
A.一般的にこのサイズがスタンダードなので理由は特になく、他の製品が定めている長さに合わせているだけです。
ボール部分もヘックスプラス?
Q.L型六角軸ショートヘッドのボール部分はヘックスプラスですが、一番人気のL型ヘックスレンチの丸軸タイプのボール部分はなぜ、ヘックスプラスではないのでしょうか。
A.実は、ショートもロングも、ボール部分はヘックスプラスではありません。ヘックスの材料からできているので見た目はヘックスプラスに見えますけどね。機能的にはボール部分にはヘックスプラスの機能はありません。
ダイヤモンドのメリット / デメリット
Q.レーザーチップと比較してダイヤモンドトップが優れている点と劣っている点を簡単に説明してください。
A.ビスがカムアウトしにくく滑らず、カッチリと回せる機能面ではほとんど同じです。ただし、新品で最初につかう時、レーザーの溝はシャープなので、食い付きがダイヤモンドよりも良いと思います。けれども、長く使うという視点で見ればダイヤモンドもレーザーも変わらない。ただ敢えて言うならば、ビスが柔らかい材質のものにはレーザーがよくて、硬いものにはダイヤモンドが機能を活かせると思います。
何故2種類あるの?
Q.ダイヤモンドコーティングの名を冠するビットは金色の物とインパクタの二種類がありますが、両者のコーティングは同じものでしょうか? やはりインパクタ用と従来用で違う構成や密度のダイヤモンドコーティングなのでしょうか? 個人的には、より強いトルクのかかるインパクタの方がやや定着率が高めなのかなと勝手に想像しているのですが。
A.ダイヤモンドコーティングは一緒ですが、ゴールドビットは硬度がHRC60鍛造で作られています。インパクタは、HRC62、ポジはHRC58削りで作られていまして、インパクトツールで使う際のデータをとり、硬さをサイズごとに変えています。
ヴェラの会社名の由来は?
A.1936年創業時のオーナーであるヘルマン・ベルナー(WERNER)さんの娘さんが、現在のオーナー(クラウス・アムテンブリンク)のお母さんということになる。ベルナーのWERとアムテンブリンクのAをとってヴェラという会社名となりました。
※この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。