日本一のネプラーを訪ねて ~トナリの工具箱 ~

「これ、注文します。」2014年1月に幕張メッセで開催された東京オートサロンのファクトリーギアブースで満面の笑みを浮かべながら購入したのは、ネプロスの完全受注生産の漆塗りラチェット。その中でも一番高価な「瀧(たき)」というモデルで、KTC自ら「観賞用美術工具」と言いきる47万円! のラチェットハンドル。注文したのは、群馬県在住の島方努さん。ファクトリーギアのイベントでは毎回必ずといってよいほど見かけるヘビーユーザーでです。今回は「トナリの工具箱」番外編として、そんな「日本一のネプラー」島方さんのご自宅へ伺うことにしました。
text & photo:飯田俊秀(ファクトリーギア広報部)

F1がきっかけで工具収集

写真左 ステッカーチューンされた愛用のツールボックス一式。この中に収まりきらない工具は2階に保管されている
写真右 もともと資材置き場を改造したガレージのため、キャビネットの後ろに茶箪笥や使わなくなった冷蔵庫などがそのまま置いてあるのも島方さんらしい。
東京から電車で約2時間、群馬県の山間に面する静かな街に島方さんの自宅はありました。玄関のすぐ横にある、資材置き場の一部を改装して作ったというわずか12畳ほどのガレージは、工具がパンパンに詰め込まれたキャビネット4台とツールワゴンが鎮座し、天井には自転車のパーツが吊り下げられている自分だけの趣味空間。ドキドキしながら引き出しを開けると、1段ごとにきちんとカテゴリー分けされていて、とても使いやすそうでした。

写真左 スナップオンも一通り揃えていても、作業を始めるとネプロスに手が伸びることが多いそうです。
写真右 スナップオンとネプロスが混在した引き出し。整理されていて非常に使いやすそう。
建築業を営んでいる島方さんの実家には常に工具が転がっていたため、幼い頃からドライバーやペンチなどをオモチャにして遊んでいたそうです。「とにかく何でも分解しなきゃ気が済まないクセは、きっとその頃についた」と笑いながら話す島方さんですが、本格的に工具にハマったのは、2000年から夢中になったF1がきっかけだったとのこと。

「フェラーリのチームが使っていたUSAGのトルクレンチが欲しくて、売っているところを調べたら市内に専門店(ファクトリーギア高崎店)があって。それから工具そのものの魅力にのめり込んでいきました。」

ネプロスからヨーロッパ工具へ

写真左 これがネプロス収集のきっかけとなったトヨタのF1参戦を記念して作られた限定セット。空いている引き出しには追加した工具がびっしりと詰め込まれています。
写真右 KTCが2006年に100セット限定で発売したネプロスのブラウンチタンコーティングセット。植毛加工された赤いスエード調の専用トレーに収められた工具は、全て褐色色のチタンコーティングが施されています。
その後、トヨタのF1参戦を記念して限定発売されたネプロスのリミテッドエディションを即決で購入。「ネプロスをKTCが作っているということは、買うまで知りませんでした(笑)でも、同じ日本人として誇りに思えるような美しい作りにとにかく感動して、絶対に全部集めてやるぞ! と心に誓ったんです。」その結果、ネプロスの全ラインアップを制覇し、現在はスタビレーやハゼットなどのヨーロッパ系の工具に注目しているというそうです。

写真左 これが観賞用美術工具である漆ラチェット。お値段なんと47万円!完成に数カ月を要するため、取材時はまだ納品されていませんでした。
写真右 限定ラチェットのストック。半分はまだ未開封のままだとか。
愛用の4台のキャビネットはもう一杯で入りきらないため、新しいツールボックスの追加を検討しつつも「その前にガレージをもっと大きくしないと、ただの工具部屋になっちゃいますね」と苦笑していましたが、このペースでいくとガレージ増設もそう先の話ではなさそうです。

※この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。

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