1940年に茨城県に工場を開設したことに「ミトロイ」のブランドは由来します。最近は工具ファンのあいだで、美しくトルクフルなL型ヘックスレンチが評判となっていますが、欧州の大手工具メーカーにインパクトソケットをOEM供給していたという歴史がある本格派の工具メーカー。手間のかかる特注品などにも丁寧に対応してくれるメーカーでもあります。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
Contents
ロゴマーク
呼称・名称・略称
水戸工機株式会社
MITOLOY
国(ブランドのある国)
日本
主要工場
日本
概要
茨城県の水戸市で創業された工具メーカーと考えられているMITOLOY(ミトロイ)のルーツは、意外なことに新潟県三条市。創業者の成田文市氏は「燕屋」という屋号で金物販売をしていたのだそうです。その後、拠点を東京に移し金物販売の仕事を続けていたものの、戦火を逃れるために茨城県の水戸市に疎開。その際に軍の工具類を製造する仕事を始めたのがミトロイの工具メーカーとしての歴史のスタートでした。
歴史(エピソード)
水戸工機 旧赤塚工場の写真(昭和15年11月撮影)
現在のミトロイの工具といえばL型ヘックスレンチのイメージが強いですが、これは、ミトロイの歩んできた歴史のなかで大きなひとつのきっかけからだといえます。今から遡ること約50年、1965年頃のこと。当時ドイツでパテントの切れたナイフ型の折りたたみヘックスレンチをミトロイが「ホローレンチ」という名称で国内ではじめて製造しました。当時、他のブランドで同様の工具がなかった日本では爆発的なヒットとなり、生産が追いつかないほどになったそうです。実は今もこのナイフ型の折りたたみレンチは、ほぼデザインを変えることなく販売されています。
その後、ミトロイの工具作りにおける大きな転機が訪れます。1980年.ドイツのケルンで開催されたハードウェアショーにインパクトソケットを出展したミトロイ。その品質は欧州の有名工具ブランドの開発者の目にとまり、欧州市場で欧州の厳しい要求に応えるOEM生産をすることとなります。このときに蓄積された製造技術は、のちのミトロイ製品の品質を高める貴重な財産となったのは間違いありません。この欧州への工具供給はその後も続き、ミトロイ製品の販売の主軸は国外になっていきました。
東京モーターショー出店の様子。左:年代不明 右:2015年 時代の流れを感じる1コマです。
2000年に入ると手薄だった国内向けに、当時、わずか2名しかいなかった営業部隊は国内市場の開拓を考え、その際、戦略的商品として選んだのが、かつて爆発的ヒットとなったホローレンチ「ヘックスレンチ」でした。しかし、ホローレンチのヒットから40年が経過し、当時の日本市場は国内外の多くのメーカーからヘックスレンチが販売されていて市場は飽和状態。クオリティーに自信があるとはいえ、ミトロイのL型ホローレンチ「ヘックスレンチ」は苦戦します。
現在の水戸工機 工場外観
そこで状況の改善を目指し、産業機械工具商時代から取引のあった上質工具専門ショップの「ファクトリーギア」を通じ、従来のマーケットではないバイクユーザーに向け、雑誌メディアを通じてのプロモーションをスタートしました。さらに特徴と差別化をはかるべくL型ヘックスの曲がり幅を最小限にしたスタビータイプを登場させると、独自の機能性と、ヨーロッパ仕込みの材料や製法にこだわって作られるハイスペックな品質が評価され、確実にブランドが浸透し、新しいマーケットへの進出に成功しました。
産業機械向けの工具メーカーでありながら、ミトロイの工具はデザイン面では派手さはないものの、長く、品質を追求して堅実に工具作りをする日本らしい製品として支持を広げています。
カテゴリー
・ラチェットハンドル
・ソケット
・レンチ
・握りもの
・その他
主な製品(代表工具)
ボール付き六角棒レンチセット「ネオ」
ミトロイのヘックスは様々な長さがラインアップされていますが、なかでも他のメーカーからは発売されていない、折り返しの短い部分が長めに作られた「ネオ」のルーツは旋盤のチャック脱着ツールとして作られた特殊工具。ところが用途を知らなかったユーザーが色々な使い方を自分たちで考え思わぬヒット商品となっています。
製品紹介ページ
デザイン・こだわり
今も変わらぬ折りたたみホローレンチ
製造開始から50年という工具ですが、今も基本的なデザインは変わらず。そのレトロ感は、逆にオシャレに感じてしまうほどです。このタイプのセット工具は品質に不安があるものも多いですが、さすが長年作り続けているミトロイだけあって、安心感のあるクオリティーで今も多くの現場で活躍しています。
製品紹介ページ
使用されている業種
・自動車業界
・機械工具業界
・建築業界
販売ルート又は購入可能場所
・工具専門店
・WEB販売
保証
保証は行っておりませんが、駆動系工具に関しては修理対応が可能。(※パーツ代は有償です)ただし、製造時期や旧タイプ等の関係で修理不可の場合もございますので、まずは販売店にお問い合わせ下さい。
主な取引先・提携先など
水戸工機のHPにて代理店一覧をご参照下さい。
参考文献
ハンドツールバイヤーズガイド 学習研究社
工具の本vol.7 学習研究社
世界の一流工具2015 洋泉社
その他
ゆるキャラ?な、イメージキャラクター?
ミトロイのカタログやイベント会場等で度々目にするイメージキャラクターの正式名称は「ミトロイ君」。2002年より採用され、2005年に現在のCGバージョンにチェンジしたそうです。
世界に一つのオリジナル工具を制作可能
ミトロイのモットーは、「皆様のパートナーになる事」。素材研究から鍛造・プレス・機械加工熱処理・組立に至るまで一貫生産を行っているので、ソケットやホローレンチ(L型レンチ)・ヘックスソケット等の特注品に関しては1個から対応可能です。まずは販売店までお気軽にお問い合わせ下さい。
外部リンク
ミトロイ ー公式サイト