絶版工具にお宝工具。その価値はともかく、古い工具にはたくさんの人の歴史と思い出が詰まっています。古い工具を手に、ちょっと昔に思いをはせてみるのも悪くありません。もしかすると、あなたの工具箱の中にもお宝工具が眠っているかもしれませんよ!
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
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年代モノのスナップオンのラチェット
右から二つ目のブラックマークのスタビラチェットは1970年頃のもの。その他の3つが1963年頃のラチェット。見た目はかなりくたびれた感じのラチェットですが、実際に動かしてみると何十年も前のものとは思えないほど滑らか。わずか20枚ギアのラチェットにも関わらずアソビは驚くほど少ない。当時、初めてこのラチェットを手にした日本人メカニックの驚きは容易に想像できます。
1955年のスナップオン VS KTCデラックスツール
全く古めかしさを感じさせないスナップオンのラチェットは、なんと1955年のモデル。後の1981年に開発されたKTCのデラックスシリーズのラチェットと非常にデザインが似ています。つまり、このラチェットこそ、のちの世界中のラチェットのモデルとなったものといえるかもしれません。
スナップオンのコンビネーションプライヤー
これも絶版のスナップオン・コンビネーションプライヤー。タコの吸盤のようなグリップはちょっと不気味ですが、先端の隙間の開き具合はいかにもアメリカンな感じです。たしかにこの構造のプライヤーの場合は先端の隙間はとても大事ですが、少し空き過ぎてしまっていたのも、もしかしたら絶版の一因だったのかも?
KTCの二重丸京
1950年に設立されたKTCが最初にロゴマークにしたのが、京のマークの外側を二重の輪で囲ったもの。その後輸出が増えたことにより、この二重丸京マークは姿を消しました。今のKTCマークとほぼ同じKTCマークもしっかりと刻まれています。
槍形スパナ
こちらはKTCが設立される以前に工具を製造していた「京都機械」という会社の工具。その後のKTC槍形と呼ばれる尖ったスパナの原型といえます。この京都機械から斉藤、山崎、宇城(敬称略)の3氏が独立してKTCが誕生しました。「ニッケルクロームバナジウム」と工具の本体の材質をここまではっきり明示するというのは、やはり材質を売りにしたかったのでしょう。当時どれだけニッケルクロームバナジウム鋼が貴重だったのかがわかります。
角度の深いオフセットめがねレンチ
こちらもKTC誕生前の「京都機械」の工具。オフセットメガネは非常に深い角度のついたものとなっています。おそらくヨーロッパのオフセットメガネがモデルとなっているのだと思われます。
KTC誕生前の丸京のソケット
ソケットはまだパワーフィットという面接触タイプのものではないものの、差込角は角にアールがとられています。いかにも頑強そうなソケットには、インパクトで使用された後もバッチリ残っています。
これなら持っているかも?比較的新しい絶版シリーズ
比較的最近まで販売されていたKTCの絶版モノ。パリダカでカミオンのチーム菅原でも愛用されていたBR20。薄いヘッドが魅力だったもののデカ顔が不評。首振りタイプのBRC20Jは小顔になったものの今度は厚みが不評。さらにその前のクビ振りはジョイントの組み方が逆。スピンナハンドルのパーツ流用だったようです。ラチェット作りの歴史は、試行錯誤の歴史。工具の中に当時のKTCの苦悩が見られる。
フラット型ロング片目片口スパナ
これも比較的新しいKTCのストレートで長いコンビネーションレンチ。シンプルだが斬新なアイデアのコンビネーションです。少し時代が早すぎたのか、今なら、もしかしたらヒットした商品だったかもしれません。
ー vol.2へ続く ー
※この特集は高野倉匡人「工具の本 2007」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。