メーカーが作り手として開発する工具ではなく、ユーザーの声を集めユーザー目線で工具を企画開発するというコンセプトで2000年に生まれた工具ブランド。ファクトリーギアが中心となって、世界の工具メーカーと時間をかけて作られる工具は日本人にフィットしたものが中心ですが、最近は日本車が多く普及するアジアやアメリカでも注目を集め、販路が世界へと広がっています。
text:高野倉匡人
Contents
ロゴマーク
呼称・名称・略称
ディーン
国(ブランドのある国)
日本
工場
日本
ドイツ
台湾
概要
世界中のほぼすべての工具は、メーカーが自社の技術、製造設備、モノ創りの思想といった提供側の発想で、商品の開発、生産、販売を行います。いわゆる「プロダクトアウト」と呼ばれる手法ですが、それに対して、DEENは市場や購買者という買い手側に立ち、工具に限らず、買い手が必要とするモノ、欲しいと感じるモノを、商品化することを目指して生まれたブランドです。いわゆる「マーケットイン」という工具業界では極めて珍しいスタイルで開発されるDEENは、一般の工具ブランドとは誕生の背景が全く異なっています。
歴史(エピソード)
DEENが生まれたのは2000年。現在はそれから17年が経過し、日本国内の工具ファンから一定の評価をうけ、しっかりと市場に根付くブランドとなっています。実は、日本は独特の工具カルチャーが根付く国で、それまでも世界中の多くの有名ブランド工具が参入しようとしてきましたが、なかなか市場を開拓できない国でした。それは、ユーザーの工具に対する評価がシビアであり、いくらブランド名をかざしても、機能性やデザイン性が日本にフィットしなければ、受け入れることを拒む厳しい市場であることを意味しています。そんな国でDEENがブランドとして確立できたのは、「ファクトリーギア」という上質工具専門ショップの存在が大きいと言えるでしょう。
「ファクトリーギア」はスナップオンを始めとする様々な世界の大手工具ブランドを販売する工具専門店。KTCネプロス、HAZET、スタビレー、KNIPEX、PBスイスツール、WERAなどの有名ブランド工具は長年に渡り、日本の工具店としてトップの販売実績を誇ります。当然、お店に集まるユーザーは工具に対しての要求が高いのですが、アメリカやドイツの工具ブランドの多くは、自国、もしくは大量に購入してくれるお客様の国のユーザーニーズをベースに設計されるものがほとんどなので、日本人の腕力、手の大きさ、使い方などにフィットしないものも少なくありません。
もう少し、ココをこんなふうに出来ないものか?こういう工具があれば便利なのに!っといった店頭に集まる声を集計し、アイデアをもって国内のメーカーや商社に要望を出しても、日本ではメーカーの発言力が強く、ユーザーの声から工具を製品化することの経験がほぼなく難しいのが現状です。ならば、メーカーの新製品開発に頼らず、新しいブランドを立ち上げ、日本のユーザー目線から工具を作ってみたい。これがDEEN誕生のきっかけとなっています。
このように、DEENは工具メーカーが作る工具ではないので、すべての工具がメーカーとの共同開発によって進められています。ショップに集められた情報をカタチにした工具なので、販売に際しては、工具の特性やキャラクターを丁寧にユーザーに伝える必要があると考え、あえて販売ルートを工具専門ショップの「ファクトリーギア」に限定しています。そのため、製造ロットは一般的な工具メーカーと比較して極端に少なく、さらに細かいリクエストを実現するために手作業による加工が多くなることから、工具メーカーにとっては面倒くさい仕事がほとんど。そのため、日本のユーザーの個性的なリクエストをベースに、新しい視点で工具を作ることに興味を持ち、DEEN開発のバックグラウンドに賛同する、いわゆる職人気質を持ったオーナー工場のみがDEENの製造協力工場となっています。このような背景から、今まではオーナー企業が多い、台湾メーカーが生産の中心となってきましたが、近年はDEENの製造ロットが増えたこともあり日本やアメリカの工具メーカーによる生産も増えてきたことで、ますます工具の個性や機能面での奥行が出てきたといえます。
時間と手間を掛け、工具作りに情熱を傾ける多くの人の共同作業により生まれるDEENは、これからも、ユーザー目線の発想で個性的な商品を生み出していくことでしょう。
カテゴリー
- ラチェットハンドル
- ソケット
- レンチ
- ドライバー
- 握りもの
- 工具箱
- その他
主な製品(代表工具)
75°オフセットメガネレンチ5PCセット
立ち上がり角度(オフセット)が深いレンチは欧州では主流のデザイン。実は浅い角度のレンチよりもビスが密集しているエリアなどでは断然使い勝手がよいこともあり、近年の日本の整備シーンでもニーズが高まっています。しかし、日本車で使いやすい組み合わせが殆どなく、幾度となくメーカーにリクエストしたものの、市場規模の小さい日本向けに製品化されることがなく、諦めに近い空気がありました。そこで、DEENでなんとかしようと企画し、3年近い歳月をかけて生まれた、逸品と呼ぶに相応しいレンチです。
デザインの特徴
日常的に使うレンチとして、徹底的にボディーをシェイプし軽量化を図っています。刻印は使用時に指先に感じるフィーリングで目視することなくサイズがわかるようなデザインになっているのも大きな特徴です。(親指に凹凸を感じる場合は小さいサイズ。凹凸を感じない場合は大きいサイズ)
また、メガネ部分の外周サイズは削り、出来るだけ薄く仕上げられています。特に側面は振り幅に直接影響することから、削ぎ落とすようなデザインになっています。
使用されている業種
オートモーティブを中心に、世界各国で業種を問わず多くのユーザーに使われています。
販売形態
歴史(エピソード)の項に記載の理由から、2017年4月現在、販売は原則ファクトリーギア各店、およびそのWEB通販に限定されています。
保証
ファクトリーギアでは、DEENのアフターサポートを明確にするために、店頭で(通販の場合はご注文の際に)ご登録頂いた全てのお客様を対象に「カスタマーサポート制度」を行っています。レンチやソケットは50年、ラチェットなどの部品を伴う工具は製造メーカーの部品供給が終了するまでという分かりやすい保証内容となっていますので、安心してお使い頂けます。
詳しくは下記URLをご確認ください。
http://f-gear.co.jp/brand/deen/12475/
主な取引先・提携先など
・スカイグループ(ポルシェ)
・日産自動車株式会社
・曙ブレーキ株式会社
・全国スバルディーラー
・全国ホンダカーズディーラー
・全国マツダディーラー
・全国ダイハツディーラー
・シーメンスヘルスケア株式会社
・株式会社ナムコ
・株式会社Olympic
・官公庁
・全国自動車大学校
・一部航空機関連メーカー
・医療機器関連メーカー
・農機具ディーラー各社
参考文献
ハンドツールバイヤーズガイド 学習研究社
工具の本vol.7 学習研究社
世界の一流工具2015 洋泉社
その他
ブランド名「DEEN」の由来
DEENというブランド名は、開発当初、デザインについての議論を進める中で常に意識していたDIN規格(ドイツ工業規格)「ディン」という言葉がオフィスに飛び交っていたことから生まれたもので、「ディン」という音をブランド名にするにあたり、一般的な工具につけられる道具っぽい名称ではなく、生涯の相棒として長く付き合い続けることが出来るよう、人の名前のようなものにしたい。と、いうことから「DEEN」という綴りになりました。
DEEN J(ディーン・ジェイ)
ディーン・ジュニアを意味するもので、この先DEENとして世に送り出したい商品のプロトタイプを、今後の製品開発を目指したものであるということを明示した上で販売しているブランド。クオリティーは高いが、DEENのようにゼロから作り上げるのではなく既存の型を使って作られているため、その分価格は低めに抑えられています。
DEEN BICYCLE(ディーン・バイシクル)
自転車用の特殊工具を中心にラインアップしているブランドですが、薄口のスパナなど一部汎用性のある工具もあり、自転車用途以外に使用するユーザーも多いブランドです。