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Ko-ken(コーケン)のこだわり
「硬さ」x「ねばり」=強さを大切にするコーケンの工具
日本国内のみならず世界で高い評価を受けるコーケンのソケット。「割れにくい」「ちょっとやそっとでは壊れない」。長く使えるコーケンのソケットの秘密を、静岡にある工場の生産管理部で聞いてきました。
お話を伺った人:山下工業研究所 生産管理部 品質戦略室 開発係 係長 古川俊宏氏
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
工場レポート
日本の工具は欧州やアメリカのブランド工具と比較すると海外での認知度がとても低いのですが、コーケンの工具に関しては逆で、日本国内よりも海外のほうが認知度が高いのではないかと思うほどです。
以前訪問した、ドイツのチューニングブランドであるブラバスの工場でも、モトGPで活躍するイタリア人のレーシングメカニックのツールボックスでも、中に入っていた日本製の工具はコーケンとミツトヨの計測工具くらいでした。
現在も輸出の比率が70%近くあるというコーケンですが、特に輸出に特化して営業をしてきたわけではないそうです。つまりコーケンの工具の海外での評価は、地道に長い時間をかけて根付いてきたものなのでしょう。駆動系工具に特化したコーケンの工具には大きなふたつの特徴があります。
ひとつめはソケットの種類が豊富なこと。かなり特殊なネジでも大抵ソケットが用意されています。営業の森田氏によれば、最近は、メーカーが特殊なネジを作っている段階で工具の相談が入ることがあるのだそうです。
そして、もうひとつの特徴が壊れにくく耐久性に優れているということ。国内ではコーケンの機能的なデザインが高く評価されていますが、海外では「コーケンは壊れない。長持ちする」という声が大きく、実はこの耐久性の高さこそが海外でのコーケンのブランド力を大きくしてきた特徴ではないかと思っています。今回の取材では、どのようにして壊れにくいソケットを開発してきたのか?に興味を持って工場に足を運びました。
まずはコーケンのソケットの特徴とはなにか?を開発の古川氏に聞くと、「こだわりともいえますが、特に気にしていることは、安心して使える工具を作るということですね。例えば、弊社のソケットは、手回し用をインパクト用よりも少し柔らかめに仕上げています。これは手回し作業でソケットが突然割れると作業者に与えるリスクが大きくなるという考え方でして、手回しのソケットでは粘りを意識し、逆にインパクトソケットは固めに仕上げ、衝撃に対する耐久性を高めています。他社では逆のスタンスもありますけど、これが特徴ではないでしょうか」とのことでした。
手作業の際の細かなフィーリングの違いを感じる日本人のメカニックに、工具のしなりや粘りという感触を伝えることで安全な作業につなげる。確かにソケットに限らず、コーケンの工具にはしなりを感じるものが多くあり、このしなりと粘りがコーケンの耐久性を生み出していたようです。では、どんなテストを経てソケットが生まれてくるのか紹介していきましょう。
ねじり試験機
ソケットの破壊試験を行うマシンで、5000Nmまで測れる大型タイプ。ハンドル系工具の破壊試験もこの機械で行うそうです。
破壊試験データ
破壊試験では、破壊トルク数値だけを確認するだけではなく、降伏点(工具が変形して元に戻らなくなる点)やねじれ角度など多方面から分析を行います。
硬度計
工具メーカーであれば大抵必ずある硬度計。コーケンではこの写真の黒いインダストリアルタイプのソケットは手回し用でも一般のソケットよりも10%程度高い硬度で仕上げられているとのこと。ちなみに今回テスト用に購入した廉価ソケットは、同じサイズの同じソケットの硬度がHRC40.6と46.4と、10%以上も違っていて個体差が大きいことがわかりました。
ラチェット&ハンドソケット耐久試験機械
3/8SQのラチェットは、50Nmで50000回の連続作業をクリアすることが基本設定。作業は1分間に最大30回の動作を行うので、約27時間のテストし続けることになります。破壊テストなどはこの耐久テストを経て行うことが多いそうです。
インパクトソケット耐久試験器
6キロ×2枚のウェイトを高さ18.5cmから落とし、ソケットに衝撃を与えるテストを繰り返します。インパクトソケットが500Nmのインパクトレンチで使用されることを想定したテストだということです。ちなみにトーションデザインのものは、しなりによってトルクの伝わり方を弱めています。ストレートデザインのホイールソケットはトルクの伝達力に優れますが耐久性は劣るので注意しましょう。
破壊試験
破壊試験、耐久試験共に結果としての数字をみるだけではなく、壊れた工具をよく見ることが重要で、万が一、作業中に壊れた時の安全性はもちろん、耐久性を向上させるためのヒントもダメージポイントから読み取ることが出来るのだそうです。