KTC・ネプロス

戦後の日本のオートモーティブ向け工具として圧倒的なブランド力を確立した京都の工具ブランドKTC。長年トヨタ自動車の搭載工具を供給していたということもあり、トヨタのモノ作りの影響を受けたといえるKTCの工具は日本らしく細部までこだわったものが多いのが特徴です。2002年に全面リニューアルされたスタンダードツールは、よりコンパクトにデザインが一新され、新しい時代の工具として高く評価されています。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

ブランド・ロゴマーク

会社名・呼称・略称

京都機械工具株式会社 KTC(ケーティーシー)
KYOTO TOOL CO., LTD.

国(ブランドのある国)

日本

主要工場

京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地

概要

本社敷地内にある「ものづくり技術館」
日本を代表する総合工具メーカー京都機械工具株式会社。一般ユーザーからは、「KTC」と呼ばれるブランド工具として日本では抜群の知名度があります。クルマ・バイク・産業機械工場など、多くのプロフェッショナルメカニックの工具箱のなかには、必ずなにかひとつはKTCの工具が入っていることもあり、多くのユーザーが工具のクオリティーについて、いつしかKTCを基準に語るようになっているほどの工具ブランドです。

歴史(エピソード)

京都機械工具が設立されたのは1950年。創業メンバーである、齊藤喜一、山崎宗次郎、宇城正行の3名は、戦前から海軍航空隊の整備用工具の生産に携わり、高品質工具作りの魂が刷り込まれていました。創業時は戦後の混乱期でモノが不足していて、品質よりも物量が求められた時代。そんな時でもKTCは品質にこだわり、高品質な材料をスウェーデンから調達したというエピソードが今も言い伝えられているほど、上質な工具作りへの意識の高いメーカーだったということがわかります。

3000セットだけ作られた幻のDツール
Dツール(デラックスツール)の開発がスタートしたのは、1995年にネプロスが誕生する14年前の1981年のこと。KTCの創業メンバーのひとりである、齊藤喜一会長(当時)が、当時、日本でも一部の工具ファンから絶大な評価を受けていたアメリカの最高級工具、スナップオンの工具を見て、「スナップオンに負けない徹底的にこだわり抜いた工具を作ろう」という目標を掲げたことに始まります。この目標に向けて作られた特別なプロジェクトチームには、技術部門からだけではなく営業部門からも参加し、連日連夜、ミーティングが重ねられたそうです。

そうして1982年に誕生したのが『TOOL SAFE』と呼ばれる最高級工具セットでした。作られた数は3000セットのみ。工具箱は金庫をイメージしたもので当時としては珍しいチェストタイプ。オーナーキーホルダーがつけられ、シリアル番号が刻まれるという斬新なものでした。入り組みの工具は新たな型を起こし、材料にもこだわった全く新しいもの。その後のKTCの高級工具作りのルーツとなりました。

強度を意識しながらも徹底的にシェイプされたコンパクトなレンチ。現在もネプロスに生きる流線型デザインのエクステンションバーなど、誕生から30年以上が経過した今も古さを感じさせないデザインは見事といえます。その後、Dツールから始まった高級工具作りへの挑戦はミラーツールへと引き継がれます。

Dツールからミラーツールへ
ミラーツールはDツール以上に美しいポリッシュフィニッシュを目指し開発された工具。しかし、常にスナップオンと比較される市場では、KTC標準工具以上スナップオン以下という、皮肉な評価をうけるようになってしまいました。そんな状況に、KTCは、1991年に再度本格的な最高級工具作りを開始します。スナップオンはもちろん、欧州の有名工具を徹底的に検証し、日本の工具メーカーの威信をかけ、文字通り世界最高級の工具を作ることへのチャレンジでした。

ミラーツールからNEPROS(ネプロス)へ
目指したのは「世界一コンパクトで美しく強い工具」。その目標を達成するために、素材のスペシャリストをメンバーに加え、3年の歳月を掛けて手に入れた新素材「5GQ」。この素材が理想とするネプロスのデザインを生み出すベースとなったのは言うまでもありません。

カテゴリー

・ラチェットハンドル
・ソケット
・レンチ
・ドライバー
・握りもの
・工具箱
・その他

主な製品(代表工具)

KTC標準工具
現在、標準工具と呼ばれるKTCの工具は、世界最高級工具を目指すネプロスの開発によって得られた製造ノウハウを、標準工具に落とし込むことによって、確実にグレードアップした工具となっています。まさにジャパンスタンダードツールと呼ぶに相応しい工具です。

NEPROS(ネプロス)
KTCが長年挑戦してきたこだわりの工具作りは、今や世界最高級工具といえるKTCの最上級ブランド「ネプロス」の誕生に結びついています。ネプロスとは「NEW PROFESSIONAL SATISFACTION(達人の新たなる満足)」からくる造語。達人とよばれる人たちが、かつて経験したことのない満足感を生み出す工具というコンセプトです。

デザイン・こだわり

ネプロスのこだわり
「音」にもこだわったネプロスの90枚ギアラチェット

使用されている業種

自動車をはじめとする輸送機器のメンテナンス業界、各種製造業のライン又は保守、建築・住宅設備業界など

販売ルートまたは購入可能場所

専門店
ホームセンター
WEB販売
部品商を通してのルート販売

保証

KTC 品質保証とアフターサービス

主な取引先・提携先など

・トヨタ自動車
・トラスコ中山
・ヤマト自動車

参考文献

ハンドツールバイヤーズガイド 学習研究社
工具の本vol.7 学習研究社
世界の一流工具2015 洋泉社

その他

KTCは日本のブランド工具として、一貫して世界の工具に負けない工具作りにチャレンジし続けてきました。だからこそ、世界中の工具が揃う日本のマーケットで、今もジャパンスタンダード工具としての存在感を保ち続けることが出来るのだといえるでしょう。

外部リンク

KTCツールオフィシャルサイト – 公式サイト