前回のラチェット編に続き、今回は各種レンチの破壊試験をレポートします。レンチは本締めや本緩めなど力を掛けて使うシチュエーションが多いだけに気になる方も多いと思いますが、はたしてメーカーや形状の違いによってどのような結果が出たのか?愛用のレンチを思い浮かべながら、じっくりとご覧ください。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
考察
レンチの強度はデザインによって大きく変わります。強さを追求すればボッテリとした重たいものになり、使いやすさが大きく損なわれてしまいます。ところがここで紹介した上質工具メーカー品は、決して強度だけを追求したものではないにも関わらず、DINの規格トルクの2倍から3倍以上の数値を軽々とマークしているものばかり。破壊トルクだけに注目するのではなく、破壊時の角度や壊れ方も注目です。かなりざっくりとした表現になってしまいますが、角度が少ないモノはしなりが少なく、角度が大きいモノはよりしなるフィーリングをイメージしてもらうと各々の個性を感じることができるのではないでしょうか。
ここでもDIY製品をテストしましたが、コンビネーションレンチにおいては強度を度外視して使い勝手に注力して作られたKTCのプロフィットツールの高い数値が出るなど、いかに上質工具ブランドの製品が追求しているレベルが高いかも感じてもらえるのではないかと思います。
オフセットメガネレンチ編
KTC
DEEN
スナップオン
ネプロス
ノンブランド品
総括~オフセットメガネレンチ
工具メーカーはレンチが破壊する際の壊れ方にもこだわっているという話はよく聞きますが、今回の実験で、壊れる瞬間の音が製品によって全く違うことを発見。高い音を立てるもの、低い音で壊れるもの。今回は実験途中で、音の違いに興味を持ったので比較ができませんでしたが、壊れるときの音は、きっとレンチの個性との関連もあるのだと思います。
超ロングストレートメガネレンチ編
KTC
DEEN
スナップオン
ネプロス
総括~超ロングストレートメガネレンチ
驚いたのが、KTCのスタンダード工具の破壊トルクが圧倒的だったということ。これはメガネ部分のデザインによるところが大きいかと思いますが、他を寄せ付けない驚きの数値といえるでしょう。また破壊角度が、17mmで5.94度から12.96度とずいぶん違うことにも注目。必ずしも硬度と破壊角度が比例するわけではないのです。こういった数値から実際のフィーリングをイメージしてみるのもよいと思います。
コンビネーションレンチ編
KTC
DEEN
スナップオン(スタンダードコンビネーション)
スナップオン(フランクドライブコンビネーション)
ネプロス
ハゼット
スタビレー
KTC(プロフィットツール)
ノンブランド品
総括~コンビネーションレンチ
スパナ部では一番高い数値を出したスナップオンですが、メガネ部になるとネプロスとディーンが高いというのも興味深いところです。
特にネプロスのメガネ部は薄く作られているのにこれだけの強度を出すというのは、芯がずれずに肉厚にムラがないからこその結果だといえるでしょう。薄くて軽いドイツ工具のメガネ部分が予想以上に強いことがわかったのも喜ばしいことです。DIY工具は試験機のなかで飛び散るほどのかなり危険な壊れ方でした。
※この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の掲載記事をWEB用に再構成したものです。
工具実験室 アーカイブ
・工具サビサビ実験 ~海水に工具はどのくらい耐えられるのか?~
・工具実験室 ~ラチェット破壊試験編~
・工具実験室 ~L型レンチ破壊試験編~
・工具実験室 ~ヘックスソケット破壊試験編~