世界最大の電動工具ブランド、ドイツの「BOSCH(ボッシュ)」。特徴と製品特性を知ってDIYからプロの作業までボッシュの電動工具を使いこなそう!

日本にはマキタ、日立、リョービといった世界的な大手電動工具メーカーがあります。欧州やアメリカでも日本製品の評価は高いものの、世界的にみるとドイツの電動工具メーカー「ボッシュ」の存在感は頭ひとつ抜けている感があります。ボッシュの電動工具は何が違うのか?ドイツブランドらしさがあるのか?今回は電動工具事業部のトレーニンググループで、日常的に製品の扱いを多くのユーザーに伝えている吉沢昌二さんに話を伺いました。
お話を伺った人 電動工具事業部トレーニンググループ 吉沢昌二さん
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)

ボッシュってどんな会社なの?

ボッシュは1861年にドイツ・シュツットガルトでロバート・ボッシュ氏により創業されました。シュツットガルトといえば、メルセデス・ベンツやポルシェ発祥の地として有名。同社はドイツの自動車メーカーへ自動車電装品を供給することで、彼らと共に大きく成長してきました。日本でボッシュのブランドイメージが電動工具よりもクルマ関連の電装品で強いのは、こういった歴史的な背景によるところが大きいのです。

ボッシュが電動工具メーカーとしての歴史をスタートしたのは1928年のこと。電動工具部門としての最初の製品は電動バリカン。自動車電装品で蓄積されたノウハウを活かして最初に作られたのが電動バリカンというのはなんとも意外な気がします。その後、1932年にハンマードリル、1946年にはジグソーを世界で最初に世に送り出しました。

2015年現在の売上額はグループ全体で525億ユーロ(約7兆円)。従業員数は30万人を超える超巨大企業となっています。ボッシュ調べ(2012年)によれば、世界の電動工具市場は113億ユーロ。そのうちボッシュの販売金額は40億ユーロを占めているので、そのシェアの大きさがわかります。

ボッシュ電動工具の特徴は?

ボッシュ製品の大きな特徴といえるのは、現在の電動工具市場のベースとなる製品の多くを生み出しているということです。前述のハンマードリルやジグソーも、もちろん今ではなくてはならない電動工具ですが、1966年に世界初といわれるDIY用電動工具がボッシュによって開発され、今やあたりまえのように充電工具で使われているリチウムイオンバッテリーを使った電動ドライバーも、2003年にボッシュによって世に送り出されたものです。こういった革新的な商品を生み出し続けるのは、全売上高の9.1%(2012年実績)ものコストを研究開発費として使っていることにあります。

特許出願件数は2011年実績では世界6位。トヨタ、LG電子を上回りヨーロッパでみればナンバーワンとなっています。そして、この技術力が汎用商品のラインアップの個性として活かされているというのもドイツブランドらしさといえるでしょう。

「安全」「まじめ」なドイツモノ

ボッシュは、自社電動工具の製品特性として「二重絶縁+エルゴノミクス(人間工学による設計)+軽量強化樹脂ボディ」の3つを併せ持っているとしています。はじめは、これが特別なものとは思えなかったのですが、今回そのひとつひとつが決してプロモーション用に付けられたものではなく、ドイツメーカーらしい「まじめ」に取り組まれたものだということを理解することができました。

ドイツはもともと「安全」にはとても気を使う国で、電動工具の二重絶縁構造というのも1952 年にボッシュが世界で初めて導入し、現在ではすべての製品に取り入れられています。そして軽量強化樹脂ボディの樹脂成分は、ポリアミドにガラス繊維を加えた同社独自のもので、落下しても壊れにくく、ブルーボディのものはクルマで踏んでも壊れないほどの強度があるのです。こういった、文字だけでは比較しにくい面にボッシュがこだわるのは、ドイツ企業が製品のスペックを表記する際「必ずどんな条件でも達成できるもの」ということを重要視しているから。ドイツのクルマのスペックがアウトバーンでの走行で、実感できる数値としているところと通じる「まじめさ」だといえるでしょう。

グリーンボッシュとブルーボッシュ

ボッシュに限らず、電動工具の多くがDIY向けとプロ向けの商品ラインアップを区別していますが、ボッシュでは、わかりやすく、本体の色がグリーンのものをDIY用、ブルーのものをプロ用として区分けしています。

製品開発では

・ブルー
仕事の仕上がり=精度
仕事の速さ=パワー
仕事のランニングコスト=耐久性

・グリーン
素人が使う=使いやすさ
できるだけ1台で=用途の広さ
購入時の要求=価格

というような点を意識しているということですが、使う側として区分けする際は、作業が仕事なのか?遊びなのか?ということではなく、連続作業時間が長いもの、パワーを必要とするもの、よりこだわった仕上げとしたいものにはブルーを選び、ちょっとした短時間の作業や手仕事の延長線にあるような、パワーをあまり必要としない作業にはグリーンというようチョイスしたほうがいいと思います。

吉沢さんにブルーとグリーンの外見上の違いとして興味深いことを伺いました。駆動部分にタイ焼き型の2枚合わせ(シェルボディ)を使っているのがDIYタイプ。継ぎ目のない一体ものを使っているのがブルーボディなのだそうです。クルマが踏んでもこわれない強度の秘密はこんなところにもあるのです。

スペック表記に惑わされず一度試して欲しい

ドイツブランドらしい地味なボッシュの電動工具はデザインもカタログも実直なもので、スペックの表記もまじめで現実的な数値になっていることから、本来の製品特性がうまく日本市場に浸透しにくく日本での知名度はイマイチな感は否めません。しかし、実際に使ってみると予想していた以上のハイパワーがあることもわかり、こだわったディテールは、ひと味違う心地よい使用感も味わえます。ドイツもの好きならば是非一度は手にして欲しい「まじめ」な電動工具だと思います。

エルゴノミクスデザインのポイント1

こうやって使うと真っ直ぐ押せる!
ボッシュの電動ドリルにはハンドルの上部に凹みがあるものがあります。これはあまり知られていないのですが、ここに手を当てるとドリルを押し込む延長線上に手を置くことができ、本体をぶらさずにまっすぐに押し込める、という、エルゴノミクスなデザインなのです。

エルゴノミクスデザインのポイント2

引っ掛かって落とさない!
今まで気にしたこともなかったハンドル部分のRデザイン。これはイザというときにここに指が引っかかって落としにくい、という隠れ安全機能なのだというのだからビックリです!

※この特集は高野倉匡人「工具の本vol.7」の記事をWEB用に再構成したものです。