世界を代表するドイツの握りもの専業メーカー。新品時の切れ味が素晴らしいものは増えていますが、切れ味が長く続くクニペックスの製品は使用頻度の多いプロから絶対的な信頼を受けています。秘伝の鉄のレシピによって生まれる素材はクニペックスのクオリティーのベースですが、製造工程を含めたメーカーとしての総合力が高いブランドだといえるでしょう。
text：高野倉匡人（ファクトリーギア代表）
Contents
ロゴマーク
呼称・名称・略称
KNIPEX-Werk C.Gustav Putsch KG KNIPEX（クニペックス）
国（ブランドのある国）
ドイツ
工場
ドイツ ヴッパータール
概要
創業者のカール・グスタフ・プッチ氏（左）と、当時の工場の様子
1882年、カール・グスタフ・プッチ氏が、ドイツで創業したKNIPEX（クニペックス）社は、世界的なプライヤー専業メーカーです。筆者は過去に多くのドイツ工具メーカーの工場及びオフィスを訪問してきましたが、日本人が思い描く、マイスターの国、上質なモノ作りの国であるドイツで、もっともドイツらしい工具メーカーといえるのがクニペックス社です。
歴史（エピソード）
130年を超える歴史を持つクニペックス社は、ドイツ工具の故郷とわれる、ヴッパタールにあります。良質な鉄の産地として知られるルール地方の南に位置するこの街は、谷間の高低差を利用し、豊富な水力を活かした水車を動力とすることで発展してきました。工業国としての歴史を歩んできたドイツのモノ作りを支えるモノ（工具）を生み出す中心で、品質にこだわった工具を作り続けてきたメーカーなのです。クニペックスの工場の一部にはクニペックス社が創業される以前である、200年以上も前の機械が動態保存された一般非公開の博物館があります。ここでは、クニペックス社のモノ作りの歴史と考え方を現代の自社で働く職人に伝えるという目的もありますが、それ以上に、ドイツ屈指の工業地帯で先人が重ねてきたモノ作りへの姿勢を大事にしようというクニペックス社の強い信念が感じられる場所でもあります。つまり、クニペックスの工具作りの中心には、ドイツ工具への強いこだわりとプライドがあるのだと思います。
そんなクニペックスの工具にはどんな特徴があるのか、2つほど挙げたいと思います。まずひとつ目が材料。クニペックスの工場があるエリアは良質な鉄の産地が近いこともあり素材へのこだわりは大きく、それが世界で評価される理由のひとつである抜群の耐久性につながっています。これは長年の経験から生み出されるオリジナルブレンドの8種類の素材を使い分けていることが大きいそうです。カット系工具には0.8％、プライヤー系には0.35％。この微妙な違いが各々の工具に求められる最適な特性を生み出し、いわゆる工具の味付けとなるそうです。
そしてもうひとつが、刃物研削職人が培ってきた技術力。ヴッパタールエリアには刃物を研削するための小屋があり、近隣には刃物の生産地として有名なゾーリンゲンもあるこのエリア。100年以上も前から、この地では切れ味鋭い刃物を研削する職人たちが技を競い合った場所でもあったのです。重ねられたドイツ職人の技を現代に生かし生み出される工具。クニペックスの工具を手にすれば、こんな背景もきっと感じられるはずです。
カテゴリー
プライヤー専業メーカー
主な製品（代表工具）
プライヤーレンチ（8603-250）
対象物をつかむ部分が平行にスライドして、テコの原理で握力の10倍の力が伝わります。握ってアプローチする工具なので、対象物とのアソビはゼロ。どんなものでもピッタリカッチリ掴んで回すことが可能です。平行に動くのでハンドル握りを軽く緩めれば、まるでラチェットレンチのような早回しをすることも出来るため、業界を問わず、様々なシーンで使える工具として、人気抜群の工具です。
デザインの特徴
プライヤーのように掴むポイントにギザギザがなくフラットなデザイン。繊細でやわらかい素材ものものでも傷つけず力強くアプローチできるのも大きな特徴。小さなモノを圧力をかけて潰すときにも便利です。
使用されている業種
自動車メンテナンス 機械メンテナンス 電気工事全般 航空 鉄道業界 他
販売形態
工具専門店
WEB販売
保証
保証制度はありませんが、メーカー規定の20項目の内容と16項目の部位で初期クレームに対応しています。
主な取引先・提携先など
世界120カ国の輸入元
クニペックスグループ
Rennsteig Werkzeuge GmbH （レンシュタイグ）
Orbis Will GmbH + Co. KG （オルビスウィル）
Will Werkzeuge GmbH & Co. KG （ウィル）
参考文献
ハンドツールバイヤーズガイド 学習研究社
工具の本vol.7 学習研究社
世界の一流工具2015 洋泉社
その他
クニペックス製品は、近年、北米、アジア地区へ積極的な拡販をしています。ドイツの老舗プライヤー専業メーカーとしてのスタンスを大事にし、決して他ジャンルの工具にラインアップを拡充することはせず、高い品質を維持することを大事にしてきたことが、世界中どこに進出しても、すぐに高い評価を確実に受けることが出来る大きな理由なのだと思います。
とはいえ、古典的に古い工具のみを作り続けているわけではなく新しい工具の開発には積極的で、開発担当者によれば、過去20年間に世界市場で商品として定着したプライヤー類の80％は自社のアイデアだと豪語するほど、新商品開発にも積極的なブランドでもあります。
外部リンク
KNIPEX – The Pliers Company – 公式サイト
