スイスのドライバー専業メーカー。レインボーカラーのL型ヘックスレンチセット、「スイスグリップ」とよばれるソフト樹脂グリップのドライバーなど、スイスメーカーらしいカラフルなデザインと、精密な製造を得意とするスイスメーカーらしい高い精度の仕上がりは長く日本の工具ファンに愛されています。輸入ドライバーとしては今も日本ではトップブランドといえるでしょう。
text:高野倉匡人(ファクトリーギア代表)
Contents
ロゴマーク
呼称・名称・略称
ピービースイスツール
国(ブランドのある国)
スイス
工場
スイス
PB 工場レポート
概要
欧州を代表する上質なドライバーメーカーであるPBスイスツールの創業は1878年。当時は農耕地が広がるのどかな山あいの町で、農業用金物を製造する小さな会社だったそうです。そんなPB社がドライバー専業メーカーに変わるきっかけとなったのは第二次世界大戦。現在のPB社の技術最高責任者マックス・バウマン氏の父親が軍隊から戻った際、当時、輸出入が禁止されていたドライバーを自国で生産することを決意したことから始まりました。
歴史(エピソード)
当時のPB社は農業用の良質な工具を生産するための金属加工の経験もあり、ドライバーのシャンクを作り自信はある程度持っていましたが、ドライバーグリップを作るための技術はありませんでした。そこで、その技術を会得するために出会ったのが一冊のアメリカの本。そこにはプラスチック成形のためのアメリカの技術が書かれていて、PBはこの技術を研究し、当時のヨーロッパ工具としては画期的な樹脂グリップのドライバーを1953年に完成させました。今も販売が継続され、根強い愛用者がいるPBのクラシックタイプのドライバーの形が、現在主流のスイスグリップとは大きく異なる角ばったデザインで、どことなく古典的なアメリカタイプのドライバーと似ているのは、こんなルーツがあったからなのです。
PBのドライバーが日本に上陸したのは1969年。日本経済が猛烈な勢いで成長しているときです。当時、日本製品は、あらゆるものを小型化することで、世界で評価をうけるようになっていました。そんな潮流と共にネジもコンパクトで強度があるものが求められ、素材は素綱からクロムモリブデンへとグレードアップ。しかし、当時はグレードアップしたネジに対応できる国産ドライバーがなかったのですが、PBのドライバーはすでにバナジウム綱を採用し、異次元の耐久性を持つと評判になり、瞬く間に日本市場で広がっていったのだそうです。
それから50年近くが経過し、現在は日本国内でも多くの高品質ドライバーがありますが、当時から続くPB神話は使用する現場ジャンルを問わず根強く、「PB信者」ともいえるほどの強烈なファンが多いブランドの一つでもあります。また、スイスブランドらしい独特の可愛らしく上品な色使いが特徴的で、上質な工具に目覚めた女性からも支持されています。工業品として無骨な印象のデザインが多い欧州工具ですが、スイスの美しい自然を感じるPBスイスツールの心地よいデザインは、新しい工具ファンを惹きつけるひとつのきっかけになるのかもしれません。
カテゴリー
ドライバー専業メーカー
主な製品(代表工具)
PB SWISSTOOLS スイスグリップドライバー
PBの膨大なラインアップのなかでも定番中の定番といえるのが「スイスグリップ」とよばれる、サントプレンとポリプロピレンを組み合わせたグリップのドライバーです。細身の樽型グリップは、最近のゴツいドライバーと比べると若干頼りなさそうですが、手に吸い付くような感触で滑り止め効果も高いため、手の小さい女性にも人気のあるドライバーです。
デザインの特徴
PBは、日本のこだわりの工具ファンから絶大な人気を誇っています。スイスのメーカーであることから欧州でももちろん販売していますが、日本での販売量は欧州各国に引けを取らないほどです。その人気はPBの圧倒的な強度なのかというと実はそうでもなく、例えば人気のPBスイスグリップはやわらかく捻じれに対しての強度は他社の樹脂グリップと比較して決して高くなく、ドライバーシャンクの強度も破壊テストの結果では際立って高いわけではありません。であるにも関わらず、なぜ高い評価をうけているのか?それは、各々の工具で最高強度を追求するのではなく、使い手にとっての心地よさを追求しているから。グリップの柔らかさ、シャンクの柔らかさが生み出す心地よいフィット感。これこそがPB製品の魅力だといえるでしょう。
使用されている業種
.・工場メンテナンス
・自動車メンテナンス
・製造関係
・電力関係
・
販売形態
・機械工具商
・工具専門店
・WEB販売
保証
メーカーにてドライバー、ビット、
主な取引先・提携先など
世界70ヵ国以上の輸入元
参考文献
ハンドツールバイヤーズガイド 学習研究社
工具の本vol.7 学習研究社
世界の一流工具2015 洋泉社
その他
カントリーサイドの工場が生みだす安定した品質
チューリッヒ中央駅からスイスの田園地帯を電車に揺られて1時間で到着する「ブルグドルフ」という可愛らしい駅。さらにクルマで30分ほど離れた山あいにPBスイスツールの素敵な工場があります。
街を歩けば通り過ぎる人々はほとんどが顔見知りという小さな町で、工場で働くスタッフもほとんどが古くからの付き合いがあり親戚のような間柄。つまり、そんなカントリーサイドの深い人々のつながりが、工場での無責任な仕事を許さない環境を生んでいるのです。